出版点数の比率だと教養新書が多いと言えます。教養新書とは何かといえば、「知的好奇心で読む本」ということです。つまり、当面必要がなくても、これは読んでおいた方がいいのではないかとか、読んでおけばいずれ何かの役に立つのではないかとか、読むことがおもしろそうだとかいうふうに判断して読む本、といえるでしょう。
このほかに、実用書というジャンルがあります。これは、知的好奇心で読むのとは少し違うビジネス書や生活に有用な本です。中公新書でもっとも売れる本は、実用書です。たとえば、
『「超」整理法』(野口悠紀雄著)は、中公新書の中で唯一、100万部に達している本ですし、もっと以前の本では、
『理科系の作文技術』(木下是雄著)、
『発想法』(川喜田二郎著)などもあります。部数から見ると、中公新書の中心は実用書だともいえるのです。しかし、実用書にも、教養書的な部分がなくてはならないし、どのような本でも、味わいのある文章で本が構成されていることが大事だと思っています。
また、中公新書で読者からの反応がいい実用書は、「書斎の中の実用」にほとんど限定されているといっていいでしょう。つまり、「金魚の飼い方」や「おいしいパン屋さんはどこにあるか」というような本ではないということです。
『「超」整理法』も
『「超」文章法』(野口悠紀雄著)も
『発想法』も
『理科系の作文技術』も皆、頭の中をどう整理するかとか、ものをどう考えればよいかとか、合理的に学ぶための手引きとなるものです。