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第139回 『リサイクルと世界経済』

「風」編集部

NEW 19/06/30

リサイクルの国際化

 魚や海鳥が、プラスチックごみなど体内で分解されない廃棄物を誤飲している、という報告が相次いでいる。海洋ごみの多くは、陸上で排出された廃棄物と考えられる。

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【G20 海洋プラスチックごみの汚染ゼロ目指す方針取りまとめへ】

 28日開幕するG20大阪サミットで、各国の首脳らは、海洋プラスチックごみによる新たな汚染を2050年までにゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を取りまとめる方向で最終調整を進めていることがわかりました。

 主要20の国と地域の首脳などが集まって28日開幕するG20大阪サミットでは、世界経済・貿易などのほか、海洋汚染の原因となっているプラスチックごみへの対策も主要な議題として取り上げられることになっていて、各国の協調姿勢を打ち出せるかが焦点となっています。

2019年6月27日  NHK NEWS WEBより
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 日本の地方自治体の中には、プラスチック製の容器や包装は他の家庭ごみと分別・回収し、ごみとして焼却したり埋め立てするのではなく、「資源品」としてリサイクル業者のもとへ持ち込むことになっているところもある。街中にもPETボトルなどの空き容器は、ビンやカンとは別のゴミ箱に「資源品」として回収され、リサイクルするしくみを採用している。
 また、企業でも最近では、スーパーやコンビニなどでレジ袋の使用をやめたり、カフェなどで提供するプラスチック製のストローを紙製に換えるなど、プラスチックごみの量を減らそうという取り組みが増えている。レジ袋の使用を禁止し、プラスチックごみの不法投棄を厳しく取り締まり、ごみの分別を厳格に実行する。仮に日本がそのようなことを実行したとして、海洋ごみを減らすことは可能なのだろうか。
『リサイクルと世界経済/貿易と環境保護は両立できるか』(小島道一著、中公新書)では、経済全体のグローバル化が進む中、リサイクルの分野でもグローバル化が進行している現状を報告する。国際的なリサイクルが急速に拡大するなか、リサイクル過程での環境汚染や、有害物質を含む廃棄物の移動など深刻な課題が山積しているという。国内で私たちが取り組んでいる「リサイクル活動」のその先がどうなっているのか、改めて現状を認識したほうがよさそうだ。
 これまで、廃棄物の収集や適正な処理は「地球環境問題」として認識されていなかった。海洋ごみの生態系への悪影響が注目されるようになったこともあり、廃棄物発生を抑制することや、処理の適正化の重大性がようやく認識されはじめ、地球環境問題に関する国際的な資金協力を活用できるようになってきたと著者は指摘している。

中国による廃プラスチック輸入制限の影響

 古紙・古着・鉄スクラップ・廃プラスチック・使用済みPETボトル。これらに中古家電なども加え、「資源品」としてリサイクルするために分別・収集した「再生資源」は、じつは今、日本の重要な輸出品目となっている。従来、廃プラスチックやPETボトルのほとんどの輸出先が中国だったが、中国政府は2017年8月、「家庭などで使用された廃プラスチック」の輸入禁止措置を発表した。公害対策が実施されていないリサイクル工場を摘発するなど、中国でも環境保護に対する意識が高まっている。輸入されて持ち込まれた「資源品」に危険物や汚物が混入しているなど質が悪く、再生利用が不可能なことが増えてきたからだという。
 それまで世界の約半分の以上の廃プラスチックが集められてきた中国。その中国が打ち出した輸入規制は、日本のみならず、今世界中に大きな影響を与え始めている。そもそも、遠く海を超えて運ばれる「廃棄物」の処理コストが、国内での処理コストより経済的に有利であるということは、輸出先(途上国)に廃棄物を押しつけ、さまざまな犠牲を強いてきたのではないか、ということを考える必要がある。
 著者の小島氏は、「環境保護対策にコストをかけていては市場競争に勝てない」と、「環境破壊を防ぐためには経済成長を止めるべき」といった両極端の意見についていずれも妥当ではないとしている。持続可能なシステム、つまり「循環経済システムへの移行」という欧州が打ち出した新しいキーワードを紹介し、環境保護と経済成長の両立をめざすために、日本ができることは何かを考えなくてはならない。PETボトルを回収したら終わり、ストローをプラスチック製から紙製にしたら十分、それだけで解決するような規模ではないはずだ。

(編集部 湯原葉子)

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