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第127回 『コンビニ外国人』

「風」編集部

NEW 18/06/30

増え続ける外国人労働者とその実像

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外国人就労拡大、首相が表明 建設・農業・介護など

安倍晋三首相は5日の経済財政諮問会議で外国人労働者の受け入れ拡大を表明した。人手不足が深刻な建設や農業、介護など5業種を対象に2019年4月に新たな在留資格を設ける。原則認めていなかった単純労働に門戸を開き、25年までに50万人超の就業を目指す。
2018/6/5 日本経済新聞 web版
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 深刻となっている労働力不足解消に向け、政府はこれまで以上にふみこんだ形での外国人労働者の受け入れ態勢を整えようとしている。

コンビニ外国人』(芹澤健介著、新潮新書)では、政策としては「移民は不可」でありながら、いまや世界第5位の「外国人労働者流入国」となっている日本の外国人就労の矛盾について明らかにしようとする。
 本書によると、日本で働く外国人労働者は、2016年には100万人を超え、そのうち約4万人以上がコンビニで働いているという。もちろん製造業や農業など、より多くの外国人労働者がいる業界もあるが、多くの人にとってはコンビニ店員が、いちばん身近に接する外国人労働者といえるだろう。
 セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンなど大手コンビニ各社は、労働力不足に対応するため、多言語対応のマニュアル作成など、積極的に外国人スタッフを受け入れようとしている。なかでもローソンは、他社に先駆けてベトナムと韓国に専用の研修施設を作り、日本に来る前にレジ打ちや接客の基本を教え込み、即戦力を育てている、しかも、著者が取材した日本にあるコンビニ実地研修施設では、流暢な日本語を話す中国人女性が、留学生相手にすべて日本語で指導していたというから驚きだ。

「移民アレルギー」?

 2014年の時点でOEDCに加盟する34ヵ国のうち、日本は世界第5位の「移民流入国」となっている。しかし、政府はこれまで、「移民」は認めないが外国人が日本で働き、人手不足を補うためのさまざまな制度を設けてきた。
 人材不足が深刻な看護師・介護福祉士を受け入れるための「経済連携協定による看護師・介護福祉士の受け入れ」制度。日本の企業や農家などで習得した技術を母国で役立ててもらうための「外国人技能実習制度」。研究者やエンジニア、経営者などに学歴や職歴、年収ごとにポイントを設け、出入国管理に優遇措置をあたえる「高度外国人材ポイント制」などである。また、留学生受け入れ拡大を目指す計画も進めている。
 これらを見ると、日本が、外国人を積極的に受け入れようとしている国に見えるのは間違いない。実際にコンビニだけではなく、工事や建設現場に出入りしている人の中にも外国人が増えており、人目にふれることの少ない製造業、農業、水産業を含め、もはや外国人労働者なしに日本の社会は成り立たなくなっているのは誰もが認めざるを得ない状況になっている。
 しかし、「留学生」という名目で在留し、高額の学費を支払いながら、実態は学費や生活費を稼ぐために長時間労働を強いられている外国人も多数存在する。彼らを日本に呼び込むため、ルールの隙間をかいくぐって「日本語学校」などで暗躍するブローカーの存在は、海外でもその悪名が知られてきている。また、多くの「外国人技能実習制度」が名ばかりで、実際は「現代の奴隷制度」とも言われるような、劣悪な労働環境で、深刻な人権問題になっていることも国際的に知られてきている。
 新たな政府の方針では、今後「単純労働」への門戸を開く、としているが、果たして、外国人労働者はきちんとした就労ルールで守られるのだろうか。そして、日本は就労先としてそこまで魅力がある国なのだろうか。「日本で働きたい」と来てくれる人がいなくなってしまえば、労働人口が減り続けている日本の未来はそこで終わりではないか。
 海外のニュースの影響もあり、「移民が増えれば犯罪率が上がり、雇用も奪われる」という発想の人も多く、国民のなかに「移民アレルギー」があるのではないか、と指摘する専門家もいるという。「移民が増えたら困る」などといっている人も、既に外国人労働者が日本の経済活動の一部を支えている事実を冷静に受け止めなくてはいけない。
 ベトナムのように「国ぐるみでの日本語学習ブーム」があるうちに、外国人と共生していくため、私たちの意識を変えた方がいいのではないだろうか。

(編集部 湯原葉子)

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