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第124回 『公文書問題』

「風」編集部

NEW 18/03/31

公文書は誰のものか

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【森友文書改ざん 財務省側、刑事責任問われる恐れ】

学校法人「森友学園」を巡る財務省の決裁文書改ざん問題は27日、佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が行われ、今後は大阪地検特捜部による捜査の行方に焦点が移る。改ざんを巡って佐川氏らに対する告発状も出ており、財務省側の刑事責任が問われる可能性もある。
(日経新聞 2018/3/27)
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 森友学園に関する財務省の決裁文書改ざんが明らかとなった。誰がいつ、どのように、何のために書類の書き換えを指示したのか。重要な政策、巨額の税金の使途などについての公式の記録である、公文書のあり方をめぐる深刻な状況がクローズアップされている。
公文書問題/日本の「闇」の核心』(瀬畑 源著、集英社新書)では、南スーダン日報「廃棄」問題、豊洲市場移転問題、そして森友・加計学園の問題等、ここ数年立て続けに起きている公文書管理に関わる不祥事を改めて検証する。国民の「知る権利」を損ない、権力者の暴走を許すこともつながりかねない深刻な問題が、ようやく国民の関心事になってきたと言える。

諸外国から「二週遅れ」の公文書管理状況

 敗戦の際、日本のあらゆる場所で戦争に関する機密書類が大量に焼却されたことはよく知られている。これは、戦争責任、とくに天皇の戦争責任を回避するために行われたことだったが、書類の廃棄は戦争が終わって突然起きたわけではない。当時の公務員は「天皇の官吏」であり、国民に対する説明責任を負っていなかった。官僚や政治家にとって、公文書は「自分たちのもの」であり、「自分たちが必要だと思うものは残す、必要ないものは捨てる」という「常識」に基づき、それまでも恣意的に扱われ、当たり前のように捨てられてきた。政策に関わる決裁文書は重要な書類として残されていても、その過程を記した文書は「不要なもの」として捨てられることが多かった、としている。
 新憲法の下、公務員は国民に対して説明責任を負うようになった。しかし、戦前からの人々の意識はそう簡単には変わらなかった。また、長く与党であった自民党は「由らしむべし知らしむべからず」という考え方が強く、文書で政策決定の「プロセスを明示する」ことに対する意識が低かったのではないか、と著者は指摘する。
 著者は2014年にも久保亨氏との共著で、『国家と秘密/隠される公文書』(集英社新書)を出版している。
 ここではまず世界の情報公開の流れに逆行する形となっている、「特定秘密保護法」(2013年に可決)の問題点と今後の展望を検証している。日本の公文書館は、設立年次、資料の整理公開状況、施設の規模や職員数……あらゆる面で諸外国から周回遅れどころか、「二周遅れ」とも言えるほど際立って遅れていると指摘し、その背後にある歴史的経緯をひもといている。

将来の日本国民に対しての説明責任

 公文書の信頼性は、現場の官僚たちが「事実」に基づいて文書を作ることを前提にしている、とも著者は指摘している。自分たちに不利になる情報が残らないよう政策決定過程の文書を残さないようにしたり、政治家の意向を「忖度」した公文書を作るようになってしまった場合、公文書の信用性は大きく損なわれる。
 今回の問題で、支持率を大きく下げた安倍政権は公文書管理制度の改革を余儀なくされている。公文書がきちんと作成・管理され、国民への説明責任を果たす制度に生まれ変わるのか、公文書管理制度の対象となる範囲を狭めるなどの「改悪」で解決しようとしてはいないか、「森友」問題に終わらせず、監視を続ける必要があるだろう。
 公文書は、現代に生きる私たちだけのものではなく、後世に残すためのものでもあり、外交などとくに重要な政策決定の経緯を残すことは、将来の日本国民に対する説明責任でもある。公文書の管理問題は、民主主義の根幹を揺るがす大きな問題であることを改めて認識したい。

(編集部 湯原葉子)

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