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第143回 『川と国土の危機』

「風」編集部

NEW 19/10/31

浸水想定区域内の車両基地

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【北陸新幹線の車両基地 3ヵ所全て浸水想定区域内 国交省】

 国土交通省は30日、全国の新幹線車両基地と留置線計28カ所のうち16カ所で、全てか一部がハザードマップなどに示された浸水想定区域内にあると明らかにした。北陸新幹線(長野経由)は、台風19号の影響で浸水した長野新幹線車両センター(長野市)を含む3カ所の関係車両基地全てが浸水想定区域内に含まれる。
(以上 引用終わり)
信毎Web 10月31日版より)
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 東日本を中心に甚大な被害をもたらした台風19号。上陸から一夜明けた10月13日、千曲川の氾濫によりJR東日本の車両基地が浸水し、北陸新幹線の車両が水に浸かったニュース映像は衝撃的だった。
 気象庁による台風接近の予測にもとづき、首都圏の鉄道各社は計画運休を実施し、羽田空港や成田空港も運用を停止した。交通機関のほとんどが運休となるため、商業施設も軒並み閉店時間を早めた。ラグビーワールドカップの試合など週末に予定されていたイベントも多くが中止となり、当日の混乱は最小限になったのではないか。
 千葉県を中心に甚大な被害をもたらした台風15号の被害も記憶に新しかったため、台風接近に対する警戒もこれまでにないほど高まり、必要な備えが実施されていると思われた。それでも被害は甚大だった。人間がコントロールできない自然災害のエネルギーの恐ろしさを改めて思い知らされた。

川と国土の危機/水害と社会』(高橋 裕著、岩波新書、2012年)は、2011年の東日本大震災後に刊行された。河川工学を専門とする著者は、日本、特に首都東京の災害リスクの深刻さについて述べている。
 国際的に評価されている保険会社の指標によると、東京・横浜の自然災害のリスク指標は世界各国の主要都市の中で群を抜いて高いことを示している。このリスク指標は、「災害発生危険度」、「脆弱性」(都市の安全対策水準、住宅密度、住宅の構造特性を数量化)、「経済影響度」(災害時に影響を受ける経済被害の規模)の3つを加算しているものだという。
 環境・災害に強い都市ランキングでも、東京のランキングは極めて低く、先進国の中で、東京は「世界一危険な都市」と言わざるをえない。

災害に備える 土地利用の見直し

 地球温暖化の影響かどうかはわからないが、台風の暴風雨の激しさは、年々増しているような気がする。また、台風に限らず、各地で「記録的大雨」の回数が増えているような感もある。一方、各国のデータ解析の精度向上や研究の進歩により、台風の進路や規模の予想は、年々精度が高まっている。気象庁の予報で「超大型台風が来る」となったら、まず外れない。そういう時代になってきている。
 今回、河川氾濫や浸水被害が起きた箇所の多くは、各自治体が周辺住民に向け、浸水の恐れのある区域や避難場所などを周知するために作成する「ハザードマップ」で示されていた。北陸新幹線が浸水被害を受けた「長野新幹線車両センター」もそのひとつだ。事前に想定された被害と、直前の予報にどう対応すべきか。緊急避難のためにどんな行動が可能だったのか、改めて検証されることになりそうだ。

 今回の台風は被害も甚大だったが、鉄道を運休させ、人々の外出を制限することでこれまで以上の「減災」につながった面もあったと思う。堤防が決壊した箇所も多数あったが、水田などを利用した遊水地に水を浸水させ、下流の氾濫を防ぐことに成功した箇所もある。人々の防災行動につながる地道な防災教育も有効であることがわかった。一方で、地震に強いとされていたタワーマンションが、地下設備の浸水により停電・断水など深刻な被害を受け、高層住民が孤立状態になるなど、都市ならではの脆弱性も明らかになった。
 著者は、多くの堤防や防潮堤は、「100年に一度の確率の高潮や洪水までは有効」だが、それ以上の大洪水には耐えられないことを知るべきである、とも指摘する。氾濫頻度の高い低地や、かつて湖沼や河道であった地域は開発を規制し、それを住民に周知し、これ以上氾濫の被害を増加させないことが重要だ、としている。
 当然ながら、河川の流域は行政の区分け通りではない。人口減少の中、地域全体、流域全体で、治水対策および防災施設や土地利用の見直しが求められるだろう、とうったえている。

(編集部 湯原葉子)

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