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[知ることの価値と楽しさを求める人のために 連想出版がつくるWEB マガジン
編集後記

2010.04.30

 4月に入ると、新調のスーツを着た新入社員を、通勤電車の中や街のあちらこちらで見かけます。ある週刊誌の中吊り広告に<今年の大卒新社会人は「ゆとり第一世代」!>という表現がありました。一般的に「ゆとり第一世代」とは、高校の改訂学習指導要領が実施された2003年度に高校一年生だった1987年4月2日から翌88年4月1日に生まれた世代をさすそうです。
「ゆとり世代」という言葉はそもそも、学力低下をもたらした原因として見直し論議が盛んな「ゆとり教育」を受けた世代という意味だったと思います。それが最近では、学力だけでなく内面についても、コミュニケーション能力がない、すぐにへこたれる、自己中心的など、メディアで酷評されることが多く、いい意味では使われていません。
 私たちNPO連想出版は神保町の「本と街の案内所」を運営しています。この4月から新たに6人の大学生が、アルバイトとして働くことになりました。先日、業務内容についての説明会をした際に、ふと彼らがこの「ゆとり世代」なのだと気づきました。彼らが本当に「コミュニケーション能力がない、すぐにへこたれる、自己中心的」な若者たちなのでしょうか。
 ゆとり教育は当初、どんな問題意識で始まったのか、どんな教育を目指していたのか、なぜ学力低下をもたらし「ゆとり世代」と“揶揄”されるような若者を生んだのか。そういった基本的なことをまずは“復習”しておこうと思い、『ゆとり教育は本当に死んだのか? : 公立校再生への道』(根本浩著、角川SSC新書)と『教育改革の幻想』(苅谷剛彦著、ちくま新書)を手に取りました。新書マップテーマ「教育改革」や「学力低下問題」には、これ以外にも関連する新書が多く収録されています。
 アルバイトの皆さんの仕事ぶりを通して、彼らの生態をじっくり観察していきたいと思っています。


編集部 中村 佳史

 4月16日の朝10時、村上春樹の新作『1Q84 BOOK3』を買いに書店へ行きました。1年近く前にBOOK1・2が刊行された時は、首都圏の書店で先行販売が行われる一方、多くの書店ではしばらく品切れが続いていました。今回は出版社の配慮というか、戦略というか、なるべく多くの読者が同時に本を手に取れるようにという方針を徹底したようです。
 各国語に翻訳されて世界中で読まれている村上作品ですが、『1Q84』の英語版はまだ出版されていません。今回のBOOK3の刊行を待っていたのかどうかはわかりませんが、予定では2011年といわれています。アメリカのアマゾンが電子書籍を販売する「キンドル・ブックストア」では、村上作品の英訳版は『スプートニクの恋人』(原作の発表は2001年)以降に発表されたものが既にオンラインで購入できます。多くのファンが待ち望んでいる『1Q84』の英語版は、電子書籍版と同時発売になるのでは、と私は勝手に予想しています。
 日本の電子書籍市場はあと1年でどれだけ広がるでしょうか。書籍の電子化が進んで、分厚い本が目の前で飛ぶように売れていく、という光景はもう見られないとすれば残念ですが、何冊分もの「本」を気軽に持ち歩ける日もやはり待ち遠しいのです。彼の次回作はオリジナルの日本語のものでも電子書籍版でも購入できるようになると期待しています。


編集部 湯原 葉子

 昨年6月25日に亡くなったマイケル・ジャクソンが主演していたディズニーランドのアトラクション「キャプテンEO」が、14年ぶりに東京ディズニーランドで再上演されることが決まりました。「キャプテンEO」は、監督フランシス・フォード・コッポラ、制作総指揮ジョージ・ルーカスという豪華スタッフによる立体映画アトラクションで、ダンスも歌も最高級のマイケルジャクソンが見られる名作です。
 本誌でも以前、マイケルの死の数日前まで行われていたコンサート・リハーサルを収録したドキュメンタリー映画「THIS IS IT」の鑑賞レポートを掲載しましたが、死後10ヵ月が過ぎてなお、マイケルは多くの人を魅了し、彼に関する作品や商品のリリースが相次いでいます。
 そんななかついにこの3月には、新書の世界でもマイケル・ジャクソンが登場しました。その名も『マイケル・ジャクソン』(西寺郷太著、講談社現代新書)という入門書です。ミュージシャンであり音楽プロデューサーでもある著者の西寺郷太氏はマイケル・ジャクソン研究家としても有名で、マイケルが死んでから、新たに彼のファンになった人々にマイケルのことをきちんと知ってもらいたいと、この本を書いたそうです。ジャクソン一家のエピソードをはじめライオネル・リッチーへのインタビューも含まれ、読み応えのある一冊です。
 2011年秋には、カナダのエンターテインメント劇団「シルク・ドゥ・ソレイユ」が、マイケルのヒット曲や伝説のダンスをフィーチャーしたショーを開催するそうで、マイケルブームはまだまだ続きそうです。「シルク・ドゥ・ソレイユ」の公演もおもしろそうですが、「キャプテンEO」をもう一度観られると思うととても楽しみです。上映は7月1日から1年間の期間限定です。


編集部 清水 有子

 

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