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編集後記
1.社会のいたるところで“崩壊”が始まっている!!
2.もはや仏にすがるしかないのか!?
3.本がすべて新書になる日も遠くない!?
4. “プチ引きこもり”状態の日本人
5. 読みやすい文章で書く - 基本に立ち戻った本作りを
“プチ引きこもり”状態の日本人
■田嶌
今の流行でいくと、草食男子を取り上げた本が出てくるかな? うち(毎日新聞)でも、林真理子さんが書いてるんですよ。『下流の宴』という連載小説の中に、無気力で無欲な若い男が出て来ます。この小説は話題をかなりよんでいるけどね。
■川井
でも、小説ならいいけども、覇気のない若い男の分析書を読みたいかと言われれば?
■田嶌
読みたくない。読みたくない。
■菊地
草食男ブームに反発するかのように、ベスト新書が毎月セックス本を出しています。この姿勢、もはや応援したくなってきます。
■田嶌
民主党政権というか、小沢一郎が狙っているものが何なのかを知りたいですね。現在の二大政党制は、イデオロギー的な分かれ方ではない。もう1回、政界再編があってもおかしくないと思う。
■菊地
小沢本は出てしかるべきでしょう。政権交代後、立て続けに鳩山本なら出ているんですが。『
鳩山由紀夫と鳩山家四代
』(森省歩著、中公ラクレ)、『
鳩山家四代/何が受け継がれてきたのか
』(梶原英之著、祥伝社新書)、『鳩山一族 その金脈と血脈』(佐野眞一著、文春新書)などですね。でも、本当はみんな、鳩山ではなく小沢が何を考えているかを知りたいのでは?
■田嶌
来年はバンクーバーで冬季オリンピック、南アフリカでワールドカップがありますね。スポーツに関するルポなり、問題提起なりが最近、新書に限らずほとんど出ない。
■菊地
今や、有力選手はマネージメント会社と契約していますが、その会社がまっとうなジャーナリストにインタビューをさせない。出版社がインタビューを申し込むと、事務所がインタビュアーを指定するんです。太鼓持ちライターが書く綺麗事しか活字にならないんですよ。
■川井
スポーツものには期待できませんか?
■菊地
うーん、以前「新書で考えるいま」で紹介した『
早実vs.駒大苫小牧
』(中村計、木村修一著、朝日新書。06年11月刊)のようなレベルのものは、奇跡としか言いようがない。それくらいスポーツ界は、取材に対して閉鎖的。
■田嶌
大きなスポーツイベントがあると、運動部の記者だけでは足りないから、社会部の記者とかが助っ人で取材に行く。でも選手は、助っ人記者が質問してもさっぱり答えないという。
■菊地
記者に面と向かって、「知らない記者とは口をきいては駄目だ、と言われてますから」と言い放ったサッカー日本代表選手もいたそうですよ。
さっきの草食男ではないですが、他人とは極力関わりを持ちたくない、面倒ごとは避けたい、という人が激増している。日本人は全体的にプチ引きこもり化してるんでしょう。
読みやすい文章で書く - 基本に立ち戻った本作りを
■田嶌
その日本人の引きこもり傾向が強くなったためだと思うけど、海外の文化などを記した新書の刊行も減りましたよね。
■川井
今後の新書界はどのような展開をしていくでしょうか。また新書に期待するものはなんでしょうか。
■菊地
今、新書というと「教養新書」と「実用新書」という2つに分けるのが主流です。でも僕は、3種類に分けるべきだと思うんです。「教養新書」をふたつに分けましょう。昔読んだ岩波新書や中公新書的な、学者や評論家らが著した教養書。専門書を読む前の知の入門書のような新書を「学術新書」と呼ぶ。それに対し、現在の経済状況や政治など時事的な問題に対する知識を手っ取り早く手に入れるための書を「教養新書」と。それに「実用新書」で、3種類ですね。
その中では「実用新書」は黙っていても、どんどん刊行されるでしょう。問題は「教養新書」がどこまで充実するかどうかです。
■川井
「学術新書」の方はどうです? 安泰ですか? 最近、私はあまり読んでないので……
■菊地
実は僕も読んでいません(苦笑)。ほんとは一番頑張らないといけないのに。というのも、残念なことに、学術新書の書き手は往々にして文章が下手。もちろん人によってですけど、総じて大学教授の文章は読みにくいんです。この間もヨーロッパの都市を描いた新書を読んだんですが、途中で止めました。興味深い内容なんですが、でもあまりにも文章が下手。
■田嶌
本当に下手な文章の本が増えているよね。読んでいて、赤を入れたくなってくるもの。要するに、新書の数が増えたために、本来なら文章が下手だから本を出してはいけないレベルの学者までが、本を出すようになった。日頃から、ちゃんとした本を読んでいないとしか思えない。本や新聞をきちんと読んでいる人の文章レベルではないもの。専門分野の研究には優れているとしても、本を読んでいないようでは、真の教養人とはいえないでしょう。
■川井
学者は、自分の研究成果を世間に対して分かりやすく伝える必要があります。学者の社会性といったものが低くなったのでしょうか。
■田嶌
本当は、編集者がそういった文章を直すなり、突き返すなりするべきだと思う。けど、今や編集者も常に5、6冊抱えているから、それどころではないんですよ。そのため、変な文章の本が出てしまう。書いてはいけないようなレベルの人が書いているのが、現状ではないでしょうか。
■川井
そのあたりをちゃんと考えて作れば、学術新書にも未来はあるかもしれませんね。文章としての質が高ければ、難しい本でも読み進められます。『
生物と無生物のあいだ
』(講談社現代新書。07年5月刊)の福岡伸一青山学院大学教授の文章はうまい。難しい事柄を、理系に疎い人にも分かりやすく説明するだけの文章の力があります。だからこそ、あの分野の本にしては異例の65万部のベストセラーになりました。
■菊地
やっぱり手間暇かけて作らないといけないということなんですよね、新書は。書棚を確保するための粗製濫造を改めない限り、新書に明日はない。少なくとも、かつての「新書」という重みある本は発刊されないでしょうね。
『
鳩山由紀夫と鳩山家四代
』
森省歩著
(中公ラクレ)
『
鳩山家四代/何が受け継がれてきたのか
』
梶原英之著
(祥伝社新書)
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