日本はどうやって国際貢献をするべきかという議論にもなりますが、いますぐできることで非常に効果があるのは、「発言する」ということです。発言するだけで、多大な国際貢献になる、とHRWはいつも言っています。日本が、虐殺されている人を放置して声をあげないでいるのではなくて、「やめなくては」と発言することが、虐殺を止めるプレッシャーを高めるのです。HRWは、政治団体ではないので、日本政府の政治的・軍事的立場などについては、コメントする立場にはありません。人命を救うためにどういう行動があるか、人権のルールや戦争法規を各国の政府や非政府組織に守らせるにはどういう行動が必要か、ということを考えているだけなのです。
例えば
ルワンダ危機の時には、大虐殺が起きていることを世界中が知りながら見捨てました。各国は非難にさらされましたが、その後も、
旧ユーゴ紛争――たとえば、スレブレニツァの虐殺など――でも、虐殺を見過ごしました。その延長線上で、いま
スーダンのダルフールでも大虐殺が続いています。決して過去の問題ではないのです。これは止めなくてはいけない、HRWは、ルワンダ虐殺の時も、その後もずっと、虐殺の真相、そして、どの国が何をすべきかをずっと発信し続けてきたのですが、成功せず、多くの人々が殺されたのです。軍事的なことも必要な場合がありますが、日本の憲法解釈や改正問題などについて、口出しすることはできません。
でも、日本には、現状で可能な限り、その持ちうる政治的・外交的影響力を、民間人保護のために使ってほしい。日本自身が、平和維持活動に参加しない事態の場合であっても、他の国が参加しやすいように、経済的に環境を整えるとか、国際世論を形作るのを助けるとか、PKOをブロックしている国に対してブロックしないでほしいという説得・プレッシャーをかけることがとても貴重で、できることがたくさんあります。スーダン政府が、
ダルフールでのPKO展開を妨害し続けています。こうした妨害をやめさせる、というプレッシャーを加えることはできるはず。人々は、PKOが安全を守ってくれることを心底望んでいるのです。スーダン政府が、債務帳消しを日本に要求しており、一部帳消しを約束してしまったようですが、スーダン政府のような、今虐殺に手を染めている政府に対して、少なくともPKOの妨害をやめさせる、民間人への攻撃をやめさせるという約束を、債務帳消しの条件に使うことによって、日本は大きな国際貢献を果たすことができます。