うーん、それはたぶん二つの考え方があると思います。一つは「どうして話が通じないのか」というような、世の中をどうみたらいいかということの手がかりは、潜在的にみんながほしがっているということですよね。例えば、大塚英志さんの80年代論の本、とか
『動物化するポストモダン』とかを若い人が読む、というのもそういう手がかりがほしいからですよね。世の中をどう見たらいいのか、ということに答えてくれるような本は常に需要があると思います。この本は哲学の本だともいえるし、文明論だともいえるし、社会時評の本だともいえるし。やはり、現代をどう見たらいいのか、ということについて応えてくれる本だからこそ読まれたのだと思うんです。
もう一つは、本だけではなく、音楽CDもそうだと思いますが、本が多すぎて何を読んだらいいのかが分からない人が増えてきていて、「売れている」ということが手がかりになってそこへ全部いってしまう。私たちが若い頃は、人が読んでいないものを読もうと思って、自分なりの指標で本屋に行って探していましたけれど、最近の人はなかなかそういうことは…。我々も
『バカの壁』だけ出しているわけではないですし、どれもおもしろいと思って作っているのでもっと読んでほしいのですが、どう読者に届かせるか、というのは非常に難しい課題です。