サンダルの青踏みしめて立つわたし銀河を産んだように涼しい
大滝 和子
お気に入りの青いサンダルを履いて立つ。しっかりと立つ。頭上には夏の夜空が広がっているのだろうか。場面は必ずしも夜でなくてもよいだろう。あたりにはさわやかな風が吹いている。「ああ、涼しい」と思う瞬間に、風や空や周囲のすべてと自分が溶け合ったような気持ちよさを感じる作者である。
この歌の魅力は、何と言っても下の句の「銀河を産んだように」というスケールの大きな比喩にある。その思いがけない表現には全く驚かされる。そしてまた、それが「涼しい」を形容している意外さ。「銀河を産んだように大きい」では、却って尻すぼみになってしまう。「銀河を産んだような充足」でもつまらない。「涼しい」という語をもってきたところで、大きさも充足感も自ずと表れ、「サンダルの青」と響きあう結果となった。
「踏みしめて」という言葉から、裸足でしっかりと立つ姿が見える。ダンスを始めて知ったのだが、速いステップを踏んだり体を素早く回転させたりするには、足指を開くような意識で踏みしめなければならない。日ごろ窮屈なパンプスに押し込めている足は思うように動いてくれず、裸足で生活することの大切さを痛感する。この歌を読んだときの涼やかな幸福感は、「サンダル」から導かれる裸足によるところもあるだろう。飾ることなく、あるがままの自分を受容し、充足している--。文句なしの名歌である。 |
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『銀河を産んだように』
大滝和子著
(砂子屋書房)
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