政府軍も、毛沢東主義ゲリラ=ナクサライトも、口では「自分たちこそが、インドの最貧困層に置かれた人の味方だ」と主張しています。しかし、その主張とはうらはらに、両陣営ともインドの最貧困層に対し、残虐行為を続けています。このナクサライト紛争のなかで起きている、両陣営からの人権侵害に苦しみ翻弄される民間人の悲劇については、残念ながら日本ではほとんど報道されません。
地元の最貧困層の民間人たちは、戦闘の真っ只中に取り残され、殺されたり、負傷したり、拉致されています。また、民間人たちは、いずれかの陣営から自分たちの側に付くようにと脅迫、強制されています。そしてどちらかに付くと、今度は、その相手方からの報復の危険にさらされているのです。
そうしたなか、インド政府は、新しい政府反乱勢力鎮圧作戦「グリーンハント作戦」を決行しました。国の準軍事部隊を派遣し、州の警察部隊とともに、ナクサライトを鎮圧しようとしています。この「グリーンハント作戦」についての、
2009年9月19日付け共同通信のニュースを見てください。「インド治安当局が、9月19日までに、今年に入り国内でテロを頻発させている極左武装組織インド共産党毛沢東主義派に対する大規模な掃討作戦を中部チャッティスガル州などで開始した」とあります。このニュースには、「治安当局は、特殊部隊約千人を動員し、18日にはチャッティスガル州の森林地帯で毛派メンバー約30人を殺害」ともあります。
インド政府も、毛沢東主義ゲリラ=ナクサライトの勢力圏の地域で、開発や発展が必要不可欠と認めるものの、ナクサライトこそがインド政府の開発・発展のイニシアチブを妨害していると主張しています。しかし、この紛争の主な要因には、天然資源の支配権をめぐる戦いという側面が強いのです。特に、内戦に苦しむ州の多くには、膨大な地下資源が眠っているといわれ、これに対する支配権をめぐって、血で血を洗う闘いが行なわれ、その狭間で民間人が苦しんでいるんです。