誤爆が頻発すること、そしてタリバン政権崩壊後に、国際社会が約束した治安の安定と発展が実現できていないことに、アフガン人たちは、国際社会やカルザイ現政権への反発を強めています。そして、人々がまたタリバン側につくという悪循環が起きているのです。
そして、新政権は、人権侵害を犯した国会議員や政府高官などを刑事訴追しないため、治安の悪化や、広範な人権侵害などが蔓延しているのです。そうした国会議員や政府高官は、軍閥を後ろ盾に持っているので、政府も手を出せないという状況です。この放置されたままの軍閥問題について、2005年、HRWは、"
Blood Stained Hands: Past Atrocities in Kabul and Afghanistan's Legacy of Impunity" という調査報告書を発表し、タリバン支配前の1990年代前半、軍閥たちが多くの残虐な戦争犯罪を犯し、その結果、何十万人ものアフガニスタンの人びとが殺されたり難民化した状況を明らかにしました。軍閥たちは処罰されるどころか、今も、地域を支配したり、国会議員や閣僚になるなどして権力を握っています。
軍閥は、一般の市民から見れば、タリバンに勝るとも劣らない非人道的犯罪をおかした権力者であるわけです。タリバン政権が崩壊した後、こうした残虐な戦争犯罪が放置されないように、5年間のトランジショナルジャスティス(独裁的政権から民主化政権へ移行するため、暴力や人権侵害の結果と取り組む努力)として、アクションプランAction Plan for Peace, Reconciliation and Justiceが策定されました。アフガン国民の大多数がこうした戦争犯罪を犯した軍閥の処罰を望み、しかもそうした取り組みはアフガンの平和を作り出すのに資すると考えているという国連の調査結果もありますが、実際にはこのプランは完全に無視されてしまっています。
日本の新政権にはぜひ、このアクションプランをしっかりと実施に移すようにアフガン政権に働きかけていただきたいと思います。そして、残虐な戦争犯罪をおかしたと考えられる軍閥のリーダーたちで現在も大な権力を持つアブドゥル・ラスル・サヤフやグルバディン・ラバニ、イスマイル・カーン、モハマド・カシム・ファヒム、アブドゥル・ラシッド・ドストム、カリーム・ハリリなどと、関係を持たないようにする努力もまずは求められると思います。