それは、責任追及こそが、残虐行為に対する将来的な抑止力になるからです。そして、軍隊がより法律を守るようになります。そして、被害者たちにも何らかの解決や補償への道筋になるからです。
09年1月12日、ジュネーブの国連人権理事会が、イスラエルによる国際人権法及び人道法の違反行為の疑いを調査するための国際調査団の派遣を決議しました。しかし残念ながら、ハマスその他のパレスチナ武装集団による違反行為については調査事項に含めませんでした。確かに、国際法違反の程度について、イスラエル軍とハマスの間には大きな違いがあります。しかし、ロケット弾を市街地に打ち込むというハマスの行為も国際法違反であることは明白です。当事者の一方だけを調査すれば、調査内容は、当然偏っていると批判されてしまうのです。紛争における違法行為の調査は、紛争のあらゆる側面について制限なく検証すべきです。
ハマスについては、これまでメンバーによる国際法違反行為を調査・処罰したということは聞いたことがありません。ですから、ハマス自らの調査は期待できず、国際社会がこれを行うべきことは明白です。
一方、イスラエル政府は、自国の軍隊による国連の学校及び国連本部に対する攻撃、そして、人口密集地帯での白リン弾の使用など、いくつかの違法行為容疑について調査をすると述べました。しかし、これでは不十分であり信頼できません。国際機関による調査が必要です。なぜなら、イスラエル軍は、過去にしっかりした調査をほとんどしてこなかったし、調査をした場合でも、欠陥だらけの調査しかしなかったからです。例えば、レバノンのカナ村で
06年7月29日に27名が犠牲になった事件に関するイスラエル軍の調査は、不完全な調査だったのみならず、法解釈を誤り、かつ目撃者らの証言と矛盾する結論を導きました。
ヨルダン川西岸の
ジェニン難民キャンプで02年4月にイスラエルが行なった軍事作戦の後、HRWは、民間人を人間の盾として使用した事など、イスラエル軍による戦争犯罪の「一応の証拠」(prima facie evidence:反証のない限り、ある事実を立証または推定するのに十分な証拠)を、イスラエル当局者に提供しました。HRWが知る限り、イスラエルはこれらの事件を今にいたるまで全く捜査しておらず、責任を追及された軍関係者もいません。
ガザ地区での前回の大規模地上侵攻(08年2月下旬から3月上旬)の際、HRWは、イスラエル軍が戦闘行為に参加していない人びとを狙い撃ちにして殺害するなど、重大な戦争法規違反を行った事を明らかにしました。現在まで、これらの事件に関してイスラエル軍は何の捜査も行っていません。今回に限って、イスラエル軍がしっかり調査をして処罰を行うということも考えられません。国際社会による調査がまずは必要です。