風
 
 
 
 
 
 
[知ることの価値と楽しさを求める人のために 連想出版がつくるWEB マガジン
編集後記

2009.09.15

 今号の「『新書』の時の人にきく」に登場していただい亀井伸孝さんには、妻の秋山なみさんとの共著による『手話でいこう/ろう者の言い分 聴者のホンネ』(ミネルヴァ書房)というエッセイがあります。「聴者」の夫と「ろう者」の妻それぞれの目線から、夫婦ゲンカなど日常のやりとりやお互いを「異文化」として認め合う様子が軽やかに描かれています。一方で、「聞こえる」聴者が圧倒的多数派の社会で「聞こえない」世界の人びとが、どれだけの不利益を被っているのかという事実、それらに対してあまりにも無自覚な聴者に対する怒りも伝わってきます。中でも亀井さんが書く「癒えるな」というテーマは印象に残りました。ろう者や手話についての基本的な事実や歴史を聴者に対して大学で講義すると、当初多かったのは「元気が出た」「耳が聞こえない人は大変なのにがんばっている、自分もがんばろうと思った」という感想。こうした安易な見方を亀井さんは「癒し系ろう者観」と名付けています。これではろう者と聴者の溝は埋まらない。手話に興味があってもなくても、少数言語としての手話への敬意はもってほしい、というお二人の主張を、しっかり受け止めたいと思います。


編集部 湯原 葉子

 今回の「MUSIC"風"のオススメ」の原稿のなかで、「ヴァイオリンは洗練された、きちっとした感じがしますが、二胡はもう少し曖昧な部分があり、人間のため息のような音がでます」という二胡奏者のチェンミンさんの談話が紹介されています。
 二胡の音色を聴くたびに、ヴァイオリンにはない二胡の響きの魅力をあらわす言葉を思いつけずにいたので、チェンミンさんの「ため息のような」という表現に目の前の雲が晴れるようでした。
 二胡といえば、チェンミンさんと同じ年に来日した二胡奏者・ウェイウェイ・ウーさんの音色もすてきです。彼女がバート・バカラックの曲を演奏したアルバム『プレイズ・バカラック』(ワーナーミュージック・ジャパン)には「クロース・トゥ・ユー」「サン・ホセへの道」などバカラックの代表曲が収録されていますが、バカラックを知らなくても、ゆったりとして透明感のある二胡の音は秋にぴったりだと思います。
 ウェイウェイ・ウーさんのオフィシャルサイトで視聴できますので、ご興味のある方はぜひどうぞ!


編集部 清水 有子

 本誌では、ニュースに興味をもって、その詳しい内容や背景を知りたいときに、新書を有効なツールとして活用してもらおうと、「新書に訊け!」というコーナーを毎号更新しています。直近の半月から1ヵ月のうちに報道された様々なニュースのなかから、5つ前後のニュースを取り上げて、関連する新書マップテーマと新書そのものを合わせて紹介しています。
 おのずと、関連する新書マップのテーマがあるか、そのものずばりを解説しているような新書が出版されているかが、どのニュースを取り上げるかの判断基準になります。そのため、社会的関心が高いニュースであっても、取り上げられない場合もあるのですが、この作業を通して「このテーマについて書かれた新書はないんだな」という発見があります。
 今月に入って、世界的なミュージシャンのニュースが2つありました。一つは、ザ・ビートルズのリマスターCDが発売されたこと。もう一つは、マイケル・ジャクソンさんの遺体が死後2ヵ月たって、やっと埋葬されたというニュースです。
 ビートルズに関しては、「ビートルズ」というテーマもありますし、コンスタントに新刊も登場していて、あらゆる角度でビートルズが語られています。
 一方で、マイケル・ジャクソンさんはというと、一般書はかなり出ていますが、彼が亡くなって2ヵ月が立ちますが、いまのところ「マイケル・ジャクソン本」は、新書では登場していません。マイケルさんがどのような人生を送り、その人生にはどのような意義があり、彼が音楽史のなかで果たした役割は何だったのか。近い将来新書の世界でも「マイケル本」が出てくるのではないでしょうか。


編集部  中村 佳史
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