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[知ることの価値と楽しさを求める人のために 連想出版がつくるWEB マガジン
日本は初戦がすべて、開催国、南アフリカに注目せよ (2)
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4. できる限りの多くの試合を観る
5. 写真はピッチで撮ってその場から即送信。
6. 日本人のファンが増えた'90年イタリア大会
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できる限りの多くの試合を観る
■明石
 もう観戦する、取材する試合は決まっているのですか。
■牛木
 私は「メディア・パス」をもらって行くので、グループリーグは観る試合は決まっています。15試合を取材したいと登録しました。グループリーグは15日間あって、その間に48試合あるのですが、1日に1試合しか登録できないことになっているんです。
「メディア・パス」というのは、あくまでも各スタジアムのメディアセンターに入れるパスで、記者席で観戦できることが保証されているわけではありません。どの試合を取材するかは登録制になっていて、優先順位が決められています。
 まず最優先されるのが、インターナショナル・エージェンシーと呼ばれる通信社のスタッフ。もともとは、AP、ロイター、UPI、AFPがその資格があったのですが、今では日本の共同通信もインターナショナル・エージェンシーに入っています。それから中国の新華社通信、ロシアのタス通信もその資格が与えられています。この通信社には、1試合につき一人は認められています。
 その次が、対戦する両国のメディア。そして次が、同じ地域の国のメディアです。例えば日本の試合であれば、他のアジア諸国のメディアが、同地域のメディアとして優先されます。
■明石
 以前はメディア・パスを持っていれば、どの試合でも見られたと聞きましたが、それはいつまでですか。
■牛木
 82年のスペイン大会までそうだったと思いますね。しかし、94年のアメリカ大会までは、申請して取材できなかったということは起きなかった。次の98年のフランス大会のときに、私も初めて観られない試合があって、仕方なくメディアセンターの大型ヴィジョンで観戦しましたね。自分の優先順位が低い試合であることはわかっていたのだけれど、ウェイティングリスト、いわゆるキャンセル待ちに登録しておいたんです。アメリカ大会までは、このウェイティングリストに登録さえしていれば、観戦できていた。だからフランス大会のときも、観戦できないことはないだろうと高をくくっていたら、駄目でした。
■川井
 今回は観戦できなさそうな試合はありますか。
■牛木
 今回はプレトリアを中心に北部地方の会場をまわろうと思っていますが、アジアではない国同士の試合もいくつかあります。だから、もしかすると見られない試合もあるかもしれませんね。
■川井
 具体的に、今回、観戦予定の試合はどれですか。
■牛木
 まず開幕試合。南アフリカ対メキシコ(ヨハネスブルグ)。これは広いスタジアムで開催されるし、各国の記者がまだ自分の国の取材に集中していて、各地の競技場に分散している時期だからまず取れると思いますね。
 次が、アルゼンチン対ナイジェリア(ヨハネスブルグ)、これも取れると思う。その次がセルビア対ガーナ(プレトリア)。これもほぼ大丈夫。そして4日目が日本対カメルーン(ブルームフォンテーン)。日本戦だから取れると思います。
 そしてブラジル対北朝鮮(ヨハネスブルグ)。これは人気があるので難しいかも。次が、南アフリカ対ウルグアイ(プレトリア)。これは地元なので人気かもしれませんね。そしてアルゼンチン対韓国(ヨハネスブルグ)、スロベニア対アメリカ(ヨハネスブルグ)、オランダ対日本(ダーバン)、ブラジル対コートジボワール(ヨハネスブルグ)、スペイン対ホンジュラス(ヨハネスブルグ)、メキシコ対ウルグアイ(ルステンブルグ)、アメリカ対アルジェリア(プレトリア)、デンマーク対日本(ルステンブルグ)、チリ対スペイン(プレトリア)です。まあ、なんとか取れると思いますがね。
 決勝トーナメントは、グループリーグが終わった後、また登録することになります。
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写真はピッチで撮ってその場から即送信
■川井
 南アフリカ中を駆け回るわけですね。原稿を書くなど仕事をする環境はどうなのでしょうか。インターネットは宿になる借家にも引いてあるのですか。
■牛木
 借家にも家主さんが引いているインターネット回線があるにはあるのだけれど、ブロードバンドではないらしい。最初は、日本からルーターを持ち込んで、借家の中のインフラを補強しようかと思ったのですが、やめました。それで、仕事はメディアセンターでしようということにしています。私のように原稿を送るくらいなら、ブロードバンド回線は必要ないけれど、カメラマンは写真データを送信しないといけないから、ブロードバンド回線でないと難しい。
■明石
 インターネットのおかげで、写真などがすぐにWEB上で見られるようになりましたね。
■牛木
 その分競争が激しくなって、カメラマンは大変ですけどね(笑)。以前はサッカーのワールドカップなんて言っても、日本では知られていないし、日本も出ていないし、現地入りするカメラマンは少なかった。だから、写真を撮って日本の雑誌に売ったら、元は充分にとれたんです。しかもデジタルカメラになる前は、撮影した写真はカメラマンの財産ですから、それをまた別の機会に売ったりすれば、いい商売になったんです。
 でも今は、カメラマンがピッチの片側に70人、両側で140人ビッシリ座っている。前回のドイツ大会からは、席まで決められるようになって、早く行って場所を取るみたないことができなくなっちゃった。
 しかも、カメラマン席一つ一つに、インターネットの回線が通じていて、シャッターを押したら即、その写真データが本社に届くようになっています。
■川井
 それはすごい。いつからそのような方法がとられるようになったのですか。
■牛木
 元々は、98年のフランス大会のとき、ロイターが、スタジアムの中に中継のアンテナを立てて、それを通して、写真データの送信も行ったのが最初ではないかと思います。実は、読売新聞も同じことをやったんですよ。ただ、ロイターは、シャッターを押したら、即ロンドンの本社へ届くようにしましたが、読売はカメラマンが写真を選んで、トリミングして、キャプションをつけて、送りました。その分、遅れました。
 日本のカメラマンは職人気質なので、自分でトリミングして、色合いを調整して、キャプションを書いて送りたいと思うから、そんなにすぐは送れない。その点、ロイターは、ロンドンでテレビ中継を見ているスタッフが、すぐに送られてくる写真データをトリミングしてキャプションを付けて配信するようにした。だから、実は日本の新聞でも早版は全部ロイターの写真だった(笑)。
 とにかく、世界各地の通信社や新聞社のカメラマンが増えたので、フリーのカメラマンは太刀打ちできない。ほとんどはピッチに下りて撮る権利を得ることすらできないので、何とかスタンドのフォトグラファー席からいい写真を撮ろうと一生懸命ですよ。
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日本は、初戦がすべて
■川井
 さて今大会での日本代表の戦力はどうでしょうか。そして、グループEとして、カメルーン、オランダ、デンマークと対戦するわけですが、どう予想されますか。
■牛木
 全体的な戦力を客観的にみれば、残念ながら最下位グループであることは間違いないでしょう。もちろん勝ってほしいのだけれど、予想としては日本3連敗かな……。
 グループリーグ、それもとにかく初戦のカメルーンに勝てるかどうかがポイントです。カメルーンに負けてしまうと、ほとんどベスト16の望みはない。カメルーンに勝てば、勝ち点3。オランダ戦で負けても、最終のデンマーク戦で勝てばもちろん、引き分けに持って行けば、ベスト16に行けるかもしれない。カメルーンが、デンマークに勝ってくれていることが条件だけれど……。
 日本は最近、カメルーンに負けたことがないから大丈夫という人がいるけど、そう易々とは勝たせてくれないと思う。カメルーンのベストメンバーと戦ったことはないですから。
 それに、下位から挑戦する立ち場の国は、もちろんカメルーンもですが、第1戦が勝負と思っている。初戦にコンディションのピークを持って行って、勝った勢いで、2戦、3戦を戦いたいと思っています。
■明石
 カメルーンに勝つためにはどうすればいいでしょうか。
■牛木
 まともに攻め合いにあったら、カメルーンの方が選手一人一人の能力が上であるだけに苦しい。私が思うに「守って守って、最後に逆襲」。とにかく前半と後半の最初は守りに徹する。そして最後に、乾坤一擲、ゴールを狙えるフォワードを入れて点を取りに行く。だからディフェンスをどう作るかが重要だと思うのですが、岡田監督はそうはしなさそうだね(笑)。
 具体的には最初は、4人のディフェンスに、中盤、最近はボランチというけれど、ディフェンスの前に3人置くというのはどうだろう。稲本はボールをとるのがうまいから、長谷部、遠藤と一緒に3人ボランチ。とにかく厚く守らなければいけないと思いますよ。そしてフォワードでは、ロシア・リーグのモスクワのチームに移ってから急成長している本田と、ヨーロッパの強いチーム相手にゴールをとっている森本。このふたりの起用がポイントでしょうね。特に森本にどう力を発揮してもらうか、そこが一番だと思いますね。
 とにかく、挑戦者は第1戦勝負。カメルーンもそう思ってくるから、ガチンコの試合になるのは間違いありませんよ。
■川井
 日本チームが今ひとつ、強くならないのはどうしてでしょうね。
■牛木
 代表チームの作り方に問題があるでしょう。この作り方としては、二つのやり方があると思います。一つは、早くから代表選手を選抜して、一ヵ所に集めてチームとしてまとめていく集中強化主義。日本はこれが好き、と言うよりもこの方法しか取ろうとしない。もう一つは、すでにヨーロッパや南米はそうですが、国際試合のある時々に、その時集められるベストメンバーを集める選抜編成主義。
 ブラジルなどを見ていても、いい選手はみんな、ヨーロッパのリーグに属していますから、ナショナルチームをふだんから集めようと思っても集まるわけがない。だからその時々、調子のいい選手を集めてチームを作る。
 監督は、一人一人の選手の状態を把握して、その選手が持っている要素を、いかに上手く融合させるかが手腕として問われているわけです。日本も、どんどん海外に優秀な選手が出ていって、そこで活躍しています。
 また集中強化主義にはもう一つ欠点があって、代表選手を集めてそのチーム作りを優先してしまうと、どうしてもクラブチームでの活動がないがしろになってしまう。そうすると、クラブチームはまったく強くなっていかない。だから次の選手も育たなくなってしまう。
 クラブチームをしっかり強化し、海外に行っていなくても、代表として国際試合に通用する選手を、日本のクラブチームで鍛えないといけないね。(敬称略)
写真提供:南アフリカ大使館
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