2004年6月、テーマで探す新書ガイドとして「新書マップ」はサービスを開始した。自分の探したい情報のキーワードや新聞記事などの文章を丸ごと入力して検索すると、それに関連する10のテーマと12のキーワードが表示される。各テーマについては、関連する新書(一部、選書)の一覧が作られていて、実際の書棚のように背表紙が並んだ写真も表示される。自分が直接知りたかったテーマだけでなく、関連するテーマも同時に示されるので、そこから新たな興味が生じたり、別の視点を得ることができる。連想検索という新しい検索技術の楽しさを体験できるサービスだ。
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新図書館について語る田中榮博館長 |
田中館長は、この連想検索を初めて見たときに衝撃を受けたと話す。「連想検索は“検索”という作業のイメージを覆らせてくれました。ふつう、検索と言えば、たくさんある情報の中から、必要な情報を絞り込んで導き出そうとするものです。ところが連想検索は絞り込むのではなくて、関連する情報が拾われていく。絞り込んでいく過程で気づかないうちに見落としていた良質な情報を、連想検索は拾い上げて発想をどんどん広げてくれる。これは凄い!と思いましたね」
図書館を調査や研究のために利用するユーザーには、この連想検索が大きな力を発揮する。なにか調べたいことがあって書籍にあたろうとしたとき、絞り込み検索だけでは、有用な書籍を見逃してしまうことがある。連想検索では、少数のキーワードを苦労して選ぶことなく、長い文章や手がかりになる書籍そのものを基点にして検索できるので、内容的に近い書籍を見つけ出せる。特定のキーワードが含まれているかどうかといったピンポイントの検索に比べて、漏れが少ない幅広い検索が可能となる。この連想検索の仕組みを利用して複数の情報源から知りたい内容の近い情報を一覧できるサービス「想-IMAGINE Book Search」や「新書マップ」は、図書館のレファレンスにはたいへん有効となる。
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新書をおく専用書見台 |
千代田図書館のシステムがユニークなのは、この連想検索を実物の新書を置くだけで利用できるようにしたことである。テーマ別に並べられた7000冊の新書にはICタグが貼られていて、専用の書見台にはICタグの情報を読み取るアンテナが仕込まれている。書見台に数冊の新書を置くと、どの本が置かれたかをシステムが読み取って、その本を基点として「想-IMAGINE」の連想検索が起動される仕組みだ。
オープン時に「想-IMAGINE」で検索できる情報源は、千代田図書館の蔵書、新書マップ、Webcat Plus(全国の大学図書館蔵書)、ウィキペディア、Book Town じんぼう(神保町の古書在庫)、文化遺産オンライン(全国の博物館収蔵品)などのデータベース。将来は、専門辞典や新聞記事アーカイブなどの商用コンテンツも利用できるようにする予定だという。
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「プレオープン」で新書マップコーナーを紹介する高野明彦情報学研究所教授 |
面白そうな新書を何冊か手に取って、それを組み合わせて書見台に置くだけで、関連する情報が目の前に広がるかつてないインタフェースによって、ユーザの発想を刺激することができそうだ。4月25日に開催されたプレオープンでシステムを試用した参加者からも驚きの声が上がっていた。
このシステムは国立情報学研究所内の連想情報学研究開発センターが設計、構築した。その中心メンバーの西岡真吾教授は、「2〜3台ではなく12台もの端末を同時に動かす仕組みにするところが一番苦労しました。利用者が自由な発想でいろいろ使い方を試して、新たな発見をしてほしい」と語る。
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