日本政府は、難民キャンプにテントを送るなどの物資支援や、国内避難民支援のための資金を出すと表明しています。また、明石康政府代表をスリランカに派遣して交渉し、民間人を犠牲にしてはいけないと大統領に伝えたということです。
もちろん、民間人の大量犠牲という問題の第一の責任は、民間人を人間の盾として使ったLTTE、そして、民間人に無差別攻撃を加えたスリランカ政府軍にあるわけですが、しかし、民間人を救出するための行動を起こさなかった国際社会にも責任があります。なかでも、OECD諸国で最大の援助国であり、スリランカ政府に極めて大きな影響力を持つ日本の責任は重いです。日本政府は確かに、物やお金は送ると表明し、二国間外交では、大統領にメッセージも伝えました。しかし、国連安全保障理事会や国連人権理事会の場では、民間人保護のための行動をとることに対し抵抗し続けたのです。その結果、閉じ込められた民間人のための人道回廊を設置して、戦闘地域から逃すという行動は、取られずじまいでした。また、民間人の無差別攻撃などの戦争犯罪を犯しているスリランカ政府とLTTEに対し、そうした行動をとれば将来責任追及が必ず行われるというメッセージも送られませんでした。
国連が民間人保護のための行動を取ろうとすると、通常抵抗するのは、中国とロシアです。今回、これに日本が加わったこと、とくに、中国やロシア以上に抵抗が激しかったことが、世界中に衝撃を与えました。ヒューマン・ライツ・ウォッチやアムネスティ・インターナショナルなど国際NGO4団体は、、この点について、異例の書簡を日本政府に送付しました。
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http://www.hrw.org/ja/news/2009/05/10-0)
スリランカの悲劇は、予測されていました。私たちをはじめ、多くの機関が、警告を発し続けました。しかし、国際社会は、必要なプレッシャーをスリランカ政府にかけることから逃げ続け、結局、多くの人命が失われたのです。国際社会は、1994年のルワンダ虐殺の経験から何も学んでいないのではないでしょうか。
(敬称略、つづく)