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[知ることの価値と楽しさを求める人のために 連想出版がつくるWEB マガジン
新書の「時の人」にきく
09 貧困が若者を襲う! なぜ若者までホームレスになるのか
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若者ホームレスは孤独感でいっぱい
雇用創出よりもまず雇用環境の改善を
若者ホームレスは孤独感でいっぱい
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"弱者"が陥りやすい罠が現代にはたくさんあります。しかしそれは本人に問題がある場合もあり、簡単に甘えるなという、ホームレスに対する厳しい見方がありますよね。
飯島
 "自己責任論"という冷めた見方も、個人的には分かる気がします。自分だってぎりぎりの収入でなんとか生活しているという人からみれば、ホームレスに対する厳しい目は当然だと思います。ですから私も世間一般の人が若者ホームレスについて考えるであろう、「なぜ彼らは実家に帰らないのか?」、「なぜ彼らは働かないのか?」といった素朴な疑問からこの本をスタートさせました。
 貧困問題、特にホームレス問題に関しては、自己責任かそうでないか? という二元論で語られることが多いように感じていますが、この本では"自己責任論"について論じるつもりはありません。50人それぞれの歩んできた人生、今の暮らしなどについて知っていただき、後の判断は皆さんにおまかせしたいと思っています。
 さらに興味深いことですが、実はホームレスになった若者の多くが、現在の境遇を"自己責任"だと思っています。今の状態になったのはすべて自分のせいだから仕方ないとあきらめ、誰にも助けを求めようとせず、自分の殻に閉じこもってしまっているのです。
――
ホームレスの人たちは、インタビューに対してあまり語りたがらないのではないかと思ってましたが、著書を読むとどの若者ホームレスもプライベートな部分までかなり話をしていますね。
飯島
 そうなんです。そのあたりも若者ホームレスの人たちの特徴と言っていいかもしれません。彼らにインタビューすると、こちらがもう十分話を聞いたと思っても、なかなか話をやめない人が多かったですね。やめないというよりも、人と話す機会がとても久しぶりだからか、もっと話を聞いてほしいという雰囲気でした。彼らは孤独なんだということを痛感しました。
――
実は、若い人がホームレスになるということ自体、ちょっと想像しにくいのですが…例えば、友だちはいないのか、親とケンカしていたとしてもいざとなれば帰れるのではないかと思うのですが。それとも、生まれながらの境遇でどうしようもないというのもあるのでしょうか。
飯島
 最初から片親しかいない、兄弟もいない、親戚付き合いもないなど、20代、30代の若さで天涯孤独になってしまっている人も確かにいます。あるいは、子どもの頃からいじめられて、友だちがまったくいないという人もいます。
 一方で、先ほど話したように、自分の境遇を"自己責任"と思っているということにつながりますが、普通に平凡な家庭生活、学生生活を送ってきたような人が、ホームレスになると家族も友達も頼れないという考え方になるようです。困っている姿を家族や友だちには見せたくないというプライドが強いのだと思いますが、そのあたりの気持ちは分かる気がします。
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家族間の関係が希薄な若者が多いのでしょうか。
飯島
 核家族化が進む前の家族を、私自身知らない世代なので、正確なことは言えませんが、以前は祖父母がいて、父母がいて、兄弟がいてというのが当たり前だったのではないでしょうか。あるいは地域との繋がりが密にあったのではないかと思います。そういう意味で、かつては親に頼れなくても、祖父母がいて兄弟がいて・・・・・・といざっとなったら頼れる人の選択肢が多くあったのだと思います。
 実際に今回インタビューをしていて、暴力を振るう親、酒浸りで働かない親、育児放棄状態の親など、ひどい親の話は多かったですね。ただ、その親自身がやはり恵まれていないことが多いのも特徴的です。経済的に不安定なまま結婚して子どもをもって苦労した、とか。
雇用創出よりもまず雇用環境の改善を
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著書を読んでいると、雇用関係の法律違反、例えば解雇権の乱用であったり、労働基準法を無視した労働時間であったり、労働保険に加入していないなどが、当然のように行われていることが分かります。政府が掲げる雇用創出の前にやるべきことがあると思うのですが。
飯島
 確かに新しく雇用を生み出すよりも、今の雇用環境を見直すことは大事ですね。若者ホームレスの中には、過去の就労経験がトラウマになっている人が多いこともわかりました。いじめに近い"指導"を受けたとか、毎日12時間以上働かされたなど、劣悪な雇用条件で働かされた人も少なくありません。こうした経験によって仕事に対するポジティブな感情が持てず、働くという意欲がわいてこないのです。
 また労災や失業手当など、労働者としての当然の権利自体を知らない人が多いのも事実です。仮に知っていたとしても上司がこわくて言いだせなかったという人や手続きが難しいと言われ、断念したという人もいます。
 自分の権利を主張する、不当な扱いを受けたらNOと言うとか、ある程度の教育を受け、社会経験がある人なら難しいことでないかもしれません。でも若者ホームレスの人たちはそれができないんです。「中卒で、何をやっても失敗ばかりの自分にはどうせ無理だ」とあきらめてしまう。ハローワークに行くのも職歴や経歴に自信がなく、ためらってしまうんですね。子どもの時から自己肯定感が乏しいことが、「どうせ何をやってもダメだ」というあきらめの境地に追い詰めているように思えてなりません。
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ホームレス予備軍は多いのでしょうか。
飯島
 病気とか、失業とか、何かあれば、路上生活になってしまうのでは、という不安を抱えている人が多いのは事実ですよね。私自身もそんな不安を感じることがあります。
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彼らがホームレスを脱し、自立していくために必要なものは何だと思いますか? 調査をしていて何かわかったことはありますか。
飯島
 若者ホームレスの問題は単なる雇用問題でなく、さまざまな問題が複合的に絡み合った問題です。ですから彼らが自立していくことは簡単なことではありません。支援制度はもちろん必要で、お金、仕事、寝場所を提供することも重要です。それとともに、社会的に彼らが暮らせる居場所を作ることがなにより必要なのではないかと考えています。
 本の中では、せっかく仕事と家が見つかって自立への一歩を踏み出したはずなのに、長続きしなかったという人の例を紹介しています。仕事でも一人ぼっち、家でも一人ぼっちに耐えられなかったんですね。彼の例からも、心の支えになるような存在が必要なのではないかと思います。友だちでも、恋人でも、NPOのスタッフでも誰でもいい。その人のことを真剣に考え、共に歩む人がいたら・・・・・・と思うのです。
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