風
 
 
 
 
 
 
[知ることの価値と楽しさを求める人のために 連想出版がつくるWEB マガジン
「新書」編集長にきく
第15回 日経プレミアシリーズ編集長 野澤 靖宏さん
BACK NUMBER
編集者であれば誰でも企画を提出できる
「日経プレミアシリーズ」は月によって刊行数が決まっていないようですが、何冊ずつ出版するなどの目安はありますか。
野澤
 点数はとくに決めていないんです。おもしろいものがあれば出すが、無理して点数をそろえようとはしないという方針です。ただ、そうは言ってもシリーズものとして書店へもアプローチしていますから、月に2、3冊を目安にはしています。
実際に、「日経プレミアシリーズ」の編集に関わっている方は何人くらいで、どのような体制なのでしょうか。
野澤
 プレミアシリーズの専従は私一人です。私も単行本を作りながらではあります。プレミアシリーズは「文化出版部」という部署が主に担当していますが、他の部門の人でも「単行本よりプレミアの方が適している」という企画があれば、持ち込んでもらうケースもあります。編集者であれば、文化出版部でなくても誰が企画を出しても構わないわけです。
編集に携わっている方は何人くらいなのですか。
野澤
 文化出版部は、制作の手伝いをしている派遣社員を含めて8人です。社としては、編集者は30人前後といったところでしょうか。
なにか定期的な会議があって、そこでテーマや具体的な企画が決まるのですか。
野澤
 いいえ。とくに企画会議などがあるわけではありません。私と、文化出版部の部長がOKを出せば、その企画が始まる感じです。部長クラスの会議で最終的な判断がなされますが、今のところ突き返されることはあまりありません。ただ、編集者に企画をあげてもらう段階で、いろいろとディスカッションしますし、営業サイドとも、「こんなタイトルがいいのでは」とか「もう少し多く刷っておいた方がいい」とか、インフォーマルなかたちでの連携はあります。
企画書にする前にディスカッションすることで、ふるいにかけて選別されているわけですね。
野澤
 そうですね。また、プレミアシリーズなら、こういう内容のものがラインアップに入っていた方がいいのでは、とか、日経ではこういう内容はやるべきでない、といった明文化されていない基準のようなものが共有されている雰囲気があります。
日本経済新聞社本体とのつながりは大きいでしょうか。
野澤
 記者や論説委員の人に書いてもらっていますが、ほかにも大きなつながりとしては、テーマについてアドバイスをもらったり、著者を紹介してもらったりすることですね。
電子出版物の制作からスタート
野澤さんはもともと記者だったのですか。それともずっと出版部門にいらしたのですか。
野澤
 弊社はいま日本経済新聞社と分社して、日本経済新聞出版社として独立しました。1992年に私が入社したときはまだ分社化前で、日本経済新聞社に入社したわけですが、最初からずっと出版畑を歩んできました。入社面接のとき出版希望と伝えたら、「本当に出版でいいの?」と聞かれました(笑)。
 最初は、電子出版の部門にいました。ビデオなどで「インターネット早わかり」とか「ビジネスマナー」といった内容のソフトを作っていました。その他にも、デジタル出版の可能性を探ったりとか、英文手紙データベースとか、変わったところでは、「社長への道」というゲームのようなCD-ROMソフトも作っていました(笑)。その後、98年に編集部に異動しました。もう10年経ったことになりますね。
今までどんな本を担当されてきましたか。担当された本をいくつか紹介して下さい。
野澤
 ジャンルはバラバラです。主なものでは『信長の棺』(加藤廣著)、『日本経済の罠』(小林 慶一郎、加藤 創太著、日経ビジネス人文庫)、『刑事たちの夏』(久間十義著)などです。
野澤さんが学生時代に読んだ新書で、印象に残っているものはありますか。
野澤
『戒厳令下チリ潜入記/ある映画監督の冒険』(G.ガルシア・マルケス著、後藤 政子翻訳、岩波新書)ですね。この本のベースとなった映画が公開されたこともあって、読んだんだと思います。大学の自主映画サークルに所属したこともあって…
最後に、今後、どんな本を作りたいとお考えですか。とくに日経プレミアシリーズで、どんなジャンルの本を扱っていきたいですか。
野澤
 フィクション、ノンフィクションの別なく、ビジネスパーソンが「共感」しながら読めるような本を出していきたいですね。その本を読んだ読者が、自分自身の思いを強くするような内容のものが出せればいいなと。実務書は確かに役に立つ本として、ビジネスパーソンにとっては重要ですが、プレミアシリーズでは、仕事を少し離れたところで、たとえば定年後の生活のうえでも共感してもらえそうなテーマも見つけたいと思っています。

(2009年6月9日 連想出版にて)
<< PAGE TOP
1 2
PROFILE

野澤靖宏
(のざわ・やすひろ)

1969年生まれ。92年早稲田大学政治経済学部卒業、同年日本経済新聞社入社。出版局電子 出版部でビデオソフトなどを制作、98年より同局編集部で書籍編集を担当し、2007年1月に日本経済新聞出版社発足と同時に文化出版部へ。

PAGE TOP
Copyright(C) Association Press. All Rights Reserved.
著作権及びリンクについて