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「新書」編集長にきく

第14回

祥伝社新書編集部 副編集長 水無瀬 尚さん
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読者を裏切らないタイトルを付ける
新書編集部はどのような体制で、どのような工程を経て新書を作成されていますか。
水無瀬
 現在、編集部は私を含めて4人です。定期的な編集会議にむけて各人が企画を用意し、それを編集会議で議論しあっています。隔月で、4、5冊ずつ出版するようにしています。
 タイトルに関しては、社長も出席して決めています。タイトル決めはやはり難しいですね。いまはどの社も「タイトル主義」でやっているのではないかと思いますが、はまるときははまっても、逆にタイトルに裏切られるケースも増えてきた気がします。各社、いまは試行錯誤なのかもしれません。
祥伝社新書の場合、あまり奇をてらうようなタイトルはありませんね。
水無瀬
 そうならないように注意しながらやってるということです。担当編集者がこれでいきたいと思っても、他の人が客観的に考えて、それでは内容が伝わらないとなれば、もう一度考え直します。担当自身には思い入れがあるので、どうしても視野狭窄になりますから。難しいことですが、おとなしいけれど、インパクトの強いタイトルというのが理想です。
1冊仕上げるにはどのくらいの期間をめどに考えていますか。
水無瀬
 内容によってまちまちですが、1年はかけたくないですね。"編集主導"というのは、こちらから書かせる、書いてもらうようにもっていくということ。せっかくの企画を塩漬けにすることがないようにしたい。
時宜を得た話題にあったものをいち早く取り上げるのが新書の特徴の一つだとすると、そのスピードは重要ですね。例えば、8月に向けて戦争ものを取り上げるとか、大河ドラマに合わせた内容を出すなど、話題話題を先取りしてやっていくことも多いのでしょうか。
水無瀬
 多くはありませんが、あるにはあります。ただ、「夏=戦争」というけれど、戦争ものもいい加減どこもかしこも手を替え品を替え出してきた。だからこそ切り口を変えることが重要なのだと思います。先ほど取り上げた『手塚治虫漫画傑作選・戦争編』は、戦争を漫画を通して考えてもいいのではないかという発想でした。
基本的に編集主導ということでしたが、例えば学者を優先するなど書き手に制約はありますか。
水無瀬
 基本的にはありません。ただ我々がつらいのは、出版不況のなか、ライターに経済的に報いているとは言えないことです。新書を1冊書いても、それだけでは生活が成り立たない。ひとつの産業として、大きな視点で新書を考えるならば、それだけで生活できないという状況を放置していては、いずれ産業として成り立たないのではないか。今後、真剣に考えないといけないことだと思いますね。
新書はひとつのメディアとして確立する!
水無瀬さんは新書編集部に入られる前はどんな本を作ってこられましたか。
水無瀬
 以前は、何人かの作家とつきあいながら小説を作っていました。でも正直なところ、小説よりもノンフィクションの方が楽しいですよ(笑)。小説というのは作家が書くもの。作家さんが書いてくれなかったら、前に進めようがないし、あるいは作家さんに嫌われたら終わり。その点、ノンフィクションの場合は、内容に関して編集者の考えが反映できる部分が大きいですからね。
学生時代に読んだ新書で、心に残っている新書はありますか。
水無瀬
 専門だったので、中公新書の『ワイマル共和国/ヒトラーを出現させたもの』はしっかり読んだ記憶がありますね。
 それから、『コーヒーが廻り 世界史が廻る/近代市民社会の黒い血液』。世界史をこういう風にもとらえることができるんだなと、ものの見方を考えさせられました。どちらも中公新書ですが、私が学生時代は、中公や岩波新書を、講義の参考書として読んでいましたよね。
 10年後、20年後に、そのときの新書編集者に同じ質問をして、うちの新書をあげてくれる人が出てくるといいなぁ(笑)
 新書の購買層の中心は、私のような中高年の男性です。ただ、新書を買うのは、昔から本を読んでいて、年を重ねても"ダラダラ"と読み続けているような人たちだと思うんです。本を読まなかった人は、年をとっても読まないですよ。大人になって急に本を読み始めるなんてほとんどない。そう考えると、「本離れ」した今の若い人たちが中高年になったとき、やはり本を読んでくれないのではないかという危機感がありますね……
今後、新書はどのような役割を果たすと思われますか。またそのなかで、祥伝社新書はどのような新書でありたいですか。
水無瀬
 ひとつのメディアになっていくと思います。書店の新書コーナーが、メディアとして確立し、ものを考えるにあたって、まずは新書の売り場を一回りしてみようとなると有り難いですね。また、他のジャンル、漫画とか写真集とかが新書として出版されることも増えてくるのではないでしょうか。文庫の役割に近くなっていくと思います。
 祥伝社新書としては、今まで通り、なるべく定番の書き手ではない人に、まずは面白いテーマありきでタイトルを増やしていきたいと思っています。
祥伝社新書の売上げベスト3
1位 高校生が感動した「論語」 佐久協著 21刷 15万部
2位 デッドライン仕事術/すべての仕事に「締切日」を入れよ 吉越浩一郎著 15刷 12万部
3位 人は感情から老化する/前頭葉の若さを保つ習慣術 和田秀樹著 15刷 9万部
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(2008年10月22日 連想出版にて)
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