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[知ることの価値と楽しさを求める人のために 連想出版がつくるWEB マガジン
「新書」編集長にきく

第11回

朝日新書編集長 岩田 一平さん
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カバーデザインを公募に! たくさんの応募に朝日新書への期待を感じる
今回、表紙のデザインを公募されたそうですが?
岩田
ええ。有名な装丁家の多くはどこかで描いているので、誰に頼んでも一長一短。それに必ずしも巨匠に頼んで良いものができるとは限らない・・・。それで、一般公募にした方がすっきりするんじゃないかな、と。それに宣伝にもなりますしね。おかげさまで多くの応募があって、創刊への期待を感じました。結果は、一般のデザイナーさんのが当選しました。誰かは10月9日に表彰式があるので、それまでは名前は発表できません(笑)
なかなかシンプルで洗練されたデザインですね。それに、白っぽい方が良いとよくいわれますしね。
岩田
本当ですか!?(笑)
本屋さんからは「白は焼ける」とか「汚れが目立つ」とかいわれましたよ。それから、整理番号を下に書かないでくれといわれました。下にすると、フェアなんかで統一した帯を使うと、整理番号が消えてしまうから。それで上にしたんだけど、そこにしてる新書は他にないんですよね(笑)。なんでかなって思ったら、上に番号入れてしまうと、タイトルが帯にかかってしまいそうで、文字を入れるエリアが小さくなってしまうんです。なかなか背表紙一つ作るのも難しいですよ。
帯は全部同じ色、デザインのものですか?
岩田
創刊の12冊は全部変えたいと思っています。帯は新潮新書に学びたいなと。
気になる他社の新書はありますか?
岩田
まずは新御三家の「新潮、ちくま、光文社」。新潮新書は上手くやっているなと思いますね。創刊からメガヒットの『バカの壁』が出たので、後は楽だったんじゃないかな。「楽だ」とかいったら怒られるかもしれませんけど(笑)。あと、分量的な部分でも上手くまとめていると思いますね。 厚くならないように。うちも224ページをスタンダードにしようと思っているのですが、やっぱりはみ出してしまう。1ページは40字の15行。書店さんからのアドバイスで、若い女性にも読んでもらうためにはそのくらい大きな字がいいそうですね。値段も700円程度に抑えたいんだけど、ページが増えてしまうとやっぱり値段に跳ね返ってしまうから、その辺りのバランスが難しいですね。
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女性読者をターゲットに『アエラ』など自社雑誌のテイストを取り込む
読者層として、女性もとりこみたいと?
岩田
女性にももちろん読んでほしいのですが、わが社の販売や書店さんによると、やはり新書はまだまだ男性の読み物だという考え方が強いみたいですね。確かに、新書が奥の方の本棚にある書店も結構あって、そんな所に置かれては女性はなかなか買いませんよね(笑)。
ただうちの『週刊朝日』や『アエラ』の読者の半分は女性。だから、そのテイストというか匂いを新書に取り入れて、アエラの特集で取り上げるようなものをタネにして出せないかなと。例えば「セックス」とかですね。そういう色合いというか、テーマのものは他ではあまりないですからね。
うかがっていますと、書店さんのアドバイスをかなり反映されている気がするのですが、やはり書店さんの意見というのは重要なのですか?
岩田
うん、僕、分からないこと多いですから(笑)
さて、ちょっと視点を替えまして、岩田編集長と新書との繋がりをうかがいたいのですが。岩田さんはもともと記者をなさっていたと?
岩田
そうです。最初は新聞記者でした。入社は1980年。鳥取支局に行って、その後『週刊朝日』の編集部に配属されました。それから、『週刊朝日』の副編集長、『アサヒカメラ』の編集長などを勤めましたから、基本的には雑誌畑ですね。新書との繋がりというのは、岩波ジュニア新書で著者として1冊書いているんですよ。『遺跡を楽しもう』というタイトルです。それが新書との唯一のつながりでした(笑)
他にも古代史関係で御本をお書きですね?
岩田
えぇ。大学時代に中央公論社の『日本の歴史』を読んで歴史が好きになって、それからずっと興味を持ってますね。先ほどの岩波ジュニア新書は、『週刊朝日』で連載していたのがご縁で書いたんですが、2000年に毎日新聞が報道した「旧石器発掘ねつ造事件」でちょっと傷ついてしまったんで、最近は遠ざかってますね(苦笑)
若いころに読まれて、心に残った新書はありますか?
岩田
そうですねぇ、大学時代は政治思想史が専門だったんで、大塚久雄さんの『社会科学における人間』などを読みましたね。赤旗みたいな文体で、口語調で読みやすいかったなと記憶しています。あとはやっぱり古代史好きだったので、岩波新書の古代史関係は結構読んでましたね。1冊あげるとすれば、中公新書で江上波夫さんが書かれた『騎馬民族国家』ですね。
最近の新書では?
岩田
最近のは、あまり読んでないんですよ、あまり読みたいのがないというか。だから自分が出してやるんだ!という意気込みですね(笑)。でも、長谷部恭男さんの「憲法論」、特にちくま新書での『憲法と平和を問いなおす』が面白かったですね。憲法論はうちでもいずれ出そうと思ってます。
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(2006年9月31日、連想出版にて)
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『憲法と平和を問いなおす』
長谷部恭男著
(ちくま新書)
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