当初から編集部員は寄せ集めです。創刊準備段階でリーダーシップを取っていた人は、長く平凡社にいたベテランの編集者でしたが、あとは私を含めほとんど外様で、何社か経た編集者やフリーランスの経験のある人たちでスタートしました。「外人部隊だね」といわれたこともありますし、私以外は全員が入れ替わった現在も基本的には同じです。私としては、よい伝統は守りつつ、しがらみにとらわれない本を作ってみたいと思っていました。あえてフットワークを軽くしようという意識もあります。
編集部員は私を含めて5人です。主な担当書でいうと、たとえば、社内の雑誌畑出身の編集者は仕掛けものが得意なので、
『憲法対論/転換期を生きぬく力 』(奥平康弘、宮台真司著)や、
『自分の顔が許せない!』(中村うさぎ、石井政之著)といった対談も手がけています。平凡社歴10年のベテランは、
『被差別部落のわが半生』(山下力著)など。法律ものが得意な女性は、法律相談番組路線の
『泣き寝入りしないための民法相談室』(伊藤真、伊藤塾著)。彼女は、小谷野敦さんの
『評論家入門』も企画しました。20代の編集者は、車谷長吉さんの対談集
『反時代的毒虫』。今は現代史ものを中心に企画を仕込んでいます。5人の関心、好み、戦略などが一番高いテンションでもっていけるような雰囲気作りを大事にしています。編集部は人の集団ですので、アイデアを言い出しにくかったり、提案しにくかったりする雰囲気にならないように心がけています。
私自身は、編集長という立場上、情報のパイプ役になることも多いです。社の内外から「こういう著者がいる」とか、「こういうことがやりたい」といった情報がさまざまに入りますので、それを受けて交通整理することも大切だと考えています。